寄与分の争いが家庭裁判所に持ち込まれた場合、裁判所はどのように評価して、寄与分を認めたり、あるいは却下したりするのでしょうか。
寄与分の要件
行為が寄与分に値するかどうかは以下の5つの観点から評価されます。
- 寄与の必要性
- 特別の貢献
- 無償性
- 継続性
- 専従性
それぞれ順番に見ていきましょう。
寄与の必要性
その寄与が無ければ家業が成り立たないかったとか、介助がなければ生活できなかったとか、必ず誰かが行わなければならなかった行為だということです。
寄与分を主張する相続人が行わなければ、お金を払ってでも誰かに頼む必要のあった行為。
この度合いが高いと認められば、寄与分として認められます。
特別の貢献
寄与分として認めるには、特別な貢献でなければなりません。
これは行為そのものだけではなく、被相続人との関係を考慮した尺度です。
夫婦が助け合うのは当然ですし、親子がお互いの面倒を看るのは当然だという考え方が寄与分にはあるということです。
例えば、夫が被相続人の場合、妻が每日、夫の食事を作っていたことは寄与分にはなりません。
それは配偶者としての当然の行為だからです。
寄与分は、この通常の助け合いを超えるものでなければならないということになります。
また、法定相続分も考慮されます。
たとえば配偶者には、最も大きな法定相続分が割り当てられますが、寄与分はこれによってすでに実現されているという考え方です。
つまり、法定相続分が大きければ、寄与分が認められるハードルも上がるということです。
これは寄与分が法定相続分の不公平感を和らげる趣旨の制度だからです。
無償性
寄与とは、財産の増加、維持に貢献していなくてはいけません。ですから、貢献に相当する対価を得ていたのであれば寄与分は認められません。
必ずしも無報酬である必要はありませんが、被相続人から何らかの経済的メリットを受けていたのであれば、それが考慮されるということです。
無償性は、実際に金銭のやり取りの有無は問いません。
また、寄与行為と対価が直接結びつかなくても対価とみなされることもあります。
たとえば、被相続人の看護に無報酬で従事していたとしても、故人の家に無償で住んでいたのであれば、これが対価とみなされます。
継続性
寄与行為の長さのことです。
例えば、値上がりする銘柄を教えたとかいうことが寄与分になることはありません。
あるいは、臨終間際のひと月ぐらいの看護が寄与分と認められることはおそらくないでしょう。
専従性
その寄与行為にどれだけ掛かりっきりだったのか?
それによって、当該相続人の経済行為がどれだけ犠牲になったかということです。
例えば、寄与行為のために会社を辞めざるを得なかったとか、勤めに出ることが出来なかったとかいう状況があれば、寄与分が認められる可能性も高くなります。
まとめ
寄与分が認められるためには、これら5つ全てが、ある程度は該当している必要があります。
5つのうち、全くかすりもしないものが一つでもあれば寄与分が通るのはかなり難しくなります。
とは言っても、5つすべてが圧倒的に満たされていないといけないわけでもありません。
そもそも、5つの評価はいずれも主観が入ることは否めないわけですから。
寄与分を主張する側は、5つの要件を満たす事実を用意しつつ、色濃く満たすものについては強く主張すればいいわけです。
逆に、認めたくない側は、ただ否定するのではなく、この5つの要件を満たしていないことを主張すればいいわけです。