寄与分の求め方。対価の後払いではない

寄与分が認められるとして、その金額を決めなければなりません。
寄与分の決め方には二通りのやり方があります。

金額で決めるやり方と、遺産総額に対する割合いで決めるやり方です。

寄与分を金額で決める

相続人が実際に支出した金額、あるいは労働に対する対価を積み上げて寄与分を算出します。

たとえば、夫の相続において、妻が家事労働とは別に、家業に一日平均5時間、月およそ20日間、5年間従事していたとします。

このときの寄与分は、仮に時給を千円に設定すれば、

時給1,000円☓5時間☓20日☓12ヶ月☓5年=600万円
とはじくことができます。

もし妻が家業に従事していなければ、人を雇って支払われていたに違いないこの金額が遺産として残っているというわけです。

 

寄与分は対価か?支出か?

今、挙げた例では問題にはなりませんが、貢献の性質によっては寄与分が予想外に少なくなってしまう場合があります。

たとえば介護。

要介護認定の被相続人を看た場合、対価としては相当な金額になります。
仮に月当たり20万円としましょう。

これを5年間続けたとすれば、対価は1千200万円。

ところが、介護保険を使って介護サービスを受ければ、自己負担は1割か2割で済みます。

自己負担1割とすれば、1千200万円に相当する介護サービスの支出は120万円にしかなりません。
これが寄与分になります。

寄与分を主張する側からすると納得いかないかもしれませんが、寄与分とは、被相続人の財産をどれだけ減らさずに済んだか?、ということです。

 

寄与分を割合で決める

もう一つの方法は、遺産総額の何%という形で寄与分を算定するものです。

もっとも、最終的には金額で表現することになるので、両者はアプローチが違うだけで、結果に違いは生じません。

そもそも、金額で決めるか、割合いで決まるかは選択ではなく、両方の観点から検討されます。

寄与分を対価としてはじき出した後、その金額が遺産総額に占める割合、あるいは他の相続人とのバランスが考慮されるということです。

これは、寄与分が、寄与行為に対する対価の後払いではなく、法定相続分の調整という趣旨だからです。

法律上、寄与分に上限はありませんが、実務では最大でも遺産総額の二分の一。
一般的には遺産総額の5%程度から30%程度の間に収まることが多いようです。

 

寄与分がある場合の遺産分割の手順

これも少々誤解が多い部分です。
民法には、寄与分を認める場合の分配の手順にまで言及してあって、以下のようになっています。

  1. 寄与分を決める。
  2. 相続開始時の財産から寄与分を差し引いたものを相続財産とみなし、法定相続分で分配する。

たとえば、3人の子どもA、B、Cが父親の遺産一千万円を分ける場合で考えてみましょう。

寄与分としてAに100万円を認めるとすると、残りの遺産は900万円になります。

これを3人で均等分割するわけですから、一人300万円。
結局、3人の相続分は以下の通りとなります。

A:400万円
B:300万円
C:300万円

つまり寄与分は寄与分、法定相続分とは別に考えるというわけ。

寄与分を受け取る相続人は、他の相続人となんら区別されることなく残りの遺産から法定相続分を受け取ることになります。

寄与分がそのまま相続分ではありません。

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