一人二役の相続人? 養子だけに起きるウレしい相続資格の重複

養子が相続においておいしいというのは、相続機会が増えることだけではありません。

一つの相続においても養子はおいしい立場に立ちます。

養子は、養子じゃない人に比べて、相続の機会が増えることを説明しました。
養子のおいしい立場。相続の機会が2倍に

これは血族が増えることで関係する被相続人が増えるからです。

今回紹介するのは、それとは違って、一つの相続において、養子に思わぬ法定相続分が転がりこんでくる話です。

記事のタイトルにも入っていますが、法曹関係者の間では、相続資格の重複問題とも言われます。

問題?
そうなんです。
実際にわりと起きている状況にも関わらず、民法に規定がないために、処理のし方には議論の余地が残ってることからなんです。

とは言っても、判例等によって、大方の見解は出ています。

ここでは頻度が多いとされる2つのケースを紹介します。
もしあなたが養子だったら、要求し忘れていませんでしたか?

 

ケース1:孫を養子にした場合の相続の重複

 

父Aが孫を養子にすると、父Aには3人の息子がいることになります。

この状態で父Aが亡くなると、養子も含めたD、B、Cで三分の一づつ相続します。

問題は父Aよりも先に息子Bが亡くなっていた場合です。

このときCは、

  • 孫の立場としては息子Bの代襲相続人
  • 父Aの息子としての相続人

この2つの立場を有するというのが重複を認めるということです。

重複が認められると、Cは、それぞれの立場の相続分三分の一の合計三分の二の法定相続分を得ます。

戸籍先例(*)では、このケースの重複が認められています。

(*)戸籍先例: 
戸籍制度を司る法務省民事局による、処理、通達、回答の集積。
裁判判例と同様に扱われる。

 

ケース2:婿を養子にした場合の重複

 

子の配偶者を養子に迎えると、その配偶者どうしは夫婦でありながら、兄弟姉妹となります。

あるいは、養子に迎えた後に、兄弟姉妹間で結婚しても状況は同じことです。
(三親等内の婚姻届は受理されませんが、血がつながっていなければ結婚できます)

で、娘夫婦に子がいないまま娘が亡くなったとします。
このとき、親も亡くなっていれば、第三順位の兄弟姉妹に相続権が回ってくるわけですが、このとき夫は、

  • 配偶者としての相続人、法定相続分は4分の3
  • 兄弟姉妹としての相続人、法定相続分は8分の1

この2つの立場を有するというのが重複を認めるということです。

重複が認められると、養子はそれぞれの立場の法定相続分の合計である8分の7の法定相続分を得ます。

戸籍先例(*)では、このケースの重複は認められず、配偶者の立場だけを認めています。

 

いかがでしょうか。

戸籍先例の判断が分かれる2つのケースを紹介しましたが、戸籍先例を抜きにすれば、なるほどと思える主張です。

遺産分割は、相続人どうしが合意すれば、それでいいわけです。

 

さて、相続の重複が起きるのも、前に記事で紹介した相続機会が増えるのも、養子縁組が従前の親子関係に一切影響を与えないからに他なりません。

ですが、養子にはそうならない養子も存在します。
それが、特別養子です。

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