養子縁組とは、人為的に法的な親子関係を成立させることです。そうして出来た親子関係における親のことを養親、子のことを養子と言います。
もっとも、そういう特別な呼び名はあるにせよ、基本的に養子は実子と変わらない立場となります。(民法809条、民法727条)
相続においても、実子と同じ扱いです。
養子にできる対象は幅広く認められていますが、よくあるのは、再婚した相手の連れ子と養子縁組するケースです。
この場合、養子は養親の第一順位の相続人になり、養親に実子がいれば、その者たちとは兄弟姉妹として同等の法定相続分を得ます。
また、その兄弟姉妹との間で相続が発生した場合も、実の兄弟と変わらぬ第三順位としての法定相続分を得ます。
ということで、相続において、ほとんどの場合(*)、養子ということを意識する必要はありませんし、ほとんどの場合(*)、養子が不利になるようなこともありません。
(*)ほとんどの場合:
養子の子が不利になるケースがあるにはあります。
と言うよりも、以下に説明するように、相続の観点からは、養子はむしろ、おいしい立場と言えるかもしれません。(*)
(*)おいしい立場:
ここで取り上げてるのは養子のうち、普通養子と呼ばれる養子縁組です。
養子にはもう一つ、特別養子縁組という制度があって、普通養子とは違った性質を持ちます。
相続の機会が2倍。既存の親子関係に影響を与えない養子縁組
養子縁組したとしても、元の親子関係は切れません。
そのまま従来通り継続します。
親子関係がそのままということは、兄弟姉妹がいれば、兄弟姉妹関係も変わらずにそのままということになります。
つまり普通養子は、元々の血縁関係に追加される形で、2つの血縁関係(*)を持つことになるわけです。
(*)2つの血縁関係: 養子縁組した方の血縁関係は、法定血族と言いいます。
それに対して養子縁組に依らない血縁関係を自然血族と言います。
ということは、元々の持っている血族関係と、養子縁組による法定血族とで、相続の機会が2倍に増える(*)わけです。
(*)相続の機会が2倍に増える:
一人の人が行う養子縁組の回数に制限はありませんから、何人もの養親を持つことは可能です。
こういう人は、養子縁組する度に、相続の機会が、3倍、4倍にもなります。
さて、相続における養子の立場のおいしさは、養子の機会が増えることだけではありません。
一つの相続においてもおいしいことあるんです。
これを相続の重複と言います。