内縁関係とは婚姻関係にない夫婦、あるいは法律上の夫婦とは認められない男女のことで、最近は事実婚という言い方もします。
いずれにしても、相続人となる配偶者ではありません。
当然に相続人と認められる配偶者は、法律婚(*)をしている者だからです。
(*)法律婚: 婚姻届が受理された戸籍上の夫婦。
ちなみに、二人の男女との間に生まれた子どもは、親が法律婚だろうが、内縁だろが関係なしに親の相続人です。
「非嫡出子の相続分。不倫の子だろうが認知さえあれば不利益無し」
このことから、それじゃひょっとしてアタシも・・なんて思ってた内縁妻は残念でした。
ただし、内縁関係の解消の際の財産分けについては、離婚時の財産分与と同等の権利を与えるという考え方があり、実際の裁判でもそのような判断がなされています。
相続にも同様の考え方がなされた判例があります。
内縁関係と一口に言ってもケースバイケースで、当然に相続権が認められるものではありませんが、実態により相続が認められることもあります。
たとえ、内縁関係の配偶者が相続人になれないからといって、遺産を受け取れないというのは早計です。
方法はいくつかあります。
- 生前贈与
- 遺贈
- 死因贈与
- 相続人不存在の場合の特別縁故者
- 賃借権の相続
- 遺族年金の受給
こんなにあると言うべきか、これぐらいしかないと言った方がいいのか分かりませんが。
1~3はいずれも被相続人、すなわち内縁相手の意志に基づいて行われるものです。
当然、本来の相続人の相続分を侵害することになりますから、その人たちと軋轢が生じることも。
4は内縁相手に身内がいない場合。
5、6は条件が揃えば発生する権利です。
6は相続からはみ出そうですが、ついでということで。
生前贈与
相続できないんだったら、生きているうちに貰っておけばいいわけです。
しかも、相続人ではないので、相続時の持戻し(*)の必要がありません。
(*)持戻し:
相続人が受けた生前贈与は特別受益といって、遺産総額に算入するルール。
そうやって算出した相続分から受け取った生前贈与分が差し引かれることになる。
贈与ですから、年額110万円を超える贈与には贈与税がかかります。
お金だけではなく、不動産や、車でも変わりありません。
ただし、生活費は贈与ではありませんから、生活費として受けっ取って、自分の収入を貯金するなど、やりようはあると思います。
遺贈
基本的に自分の遺産の処分は自分で自由に決められます。
その手段が遺言書です。
ですから、内縁相手に遺産を譲る旨を記した遺言書を書いて貰えばいいわけです。
ただし、相続人の遺留分を侵害するような遺贈であれば、その分は請求される可能性はあります。
負担付遺贈
遺贈先として指定された人を受遺者といいます。
負担付遺贈とは、遺産を譲る条件として、受遺者になんらかの義務を求める遺贈のことを言います。(民法1002条)
遺言執行者や、相続人によって、義務が果たされていないとされれば遺贈の実行は難しくなります。
最終的には裁判所の判断になりますが。
負担付遺贈は受遺者にとってほとんどメリットはありませんが、遺言者にはメリットがあります。
例えば遺言者の看護などを遺贈の条件にすることが出来ます。
死因贈与
贈与者の死亡によって効力が発生する贈与のことを死因贈与といいます。(民法554条)
これを内縁相手と合意しておけば遺贈とほぼ同じ効果があり、後に残された内縁相手は遺産を手にできます。
遺贈との違いは、遺贈が故人による単独行為であるのに対して、死因贈与は内縁の配偶者どうし(贈与者と受贈者)との契約であるということです。
このことは受贈者にとってメリットがあります。
それは、契約なので一方が勝手に取り消したり、変更したりすることが出来ないことです。
これは、遺言者の独断で、取り消したり、書き直したりすることができる遺贈と大きく異なる点です。(民法1022条)
また、一般的な契約と同様に、形式にはこだわりません。
この点も、厳しい文書化ルールに則らないと有効化されない遺贈と違う点です。
もちろん、無用な揉め事にならないように文書化した方がいいことは言うまでもありません。
ちょっとイレギュラーですが、形式にこだわらないということを逆手に取ることだって出来ます。
例えば、死因贈与の文書化になかなか乗ってこない内縁相手であれば、会話を録音したり、撮影したり、あるいは直筆のメモ書きを書かせて残しておけば、それが死因贈与の契約になり得るということです。
負担付死因贈与
死因贈与の条件として、受贈者に何らかの負担を付けるもので、負担付遺贈と考え方は同じです。
相続人不存在の場合の特別縁故者
故人の戸籍上に法定相続人が見当たらない場合、あるいは全ての相続人が相続放棄した状況を指して、相続人不存在といいます。
この場合、故人と深い縁故がある人を特別縁故者といって、この人に遺産を与えるものです。(民法958条)
特別縁故者には、故人と生計を一にしていた者や、長年故人の看護に当っていた者などの条件がありますが、元々の趣旨が遺産を国庫に入れるよりも、内縁関係などの縁故者に財産を分与する方が望ましいということがあります。
裁判所によって相続人不存在が確定した後、縁故者が申し立てを行い、財産分与の審判が確定すれば、財産が引き渡されます。
賃借権の相続
居住用の家屋の賃借人が相続人なしに亡くなった場合、同居していた内縁の配偶者は賃借の権利を継承できます。(借地借家法36条)
また、相続人がいる場合でも、同居していた内縁の配偶者は承継した賃借人に居住権を対抗(主張)できるとされます。
遺族年金の受給資格
婚姻期間等の所定の条件を満たしている場合に、残された配偶者が受給できるものです。
ですが、この配偶者の定義は、法律婚のみではないことが国民年金法にも厚生年金法にも以下の通り明記されています。
「事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする」
ただし、相手に法律上の配偶者がいる場合には、どちらに受給権があるかは当然、争いなります。