養子の子の代襲資格。理念を反映したに過ぎない出生日と縁組日との関係

養子も実子と同様に代襲相続人になり得ます。
代襲相続。親の権利を子が引き継ぐ

相続では、養子も実子も区別されませんから、これは特段説明することでもありません。

今回取り上げるのはそれではなく、養子が代襲される側、被代襲者になるケースです。

養子は、相続によっておいしい立場こそあれ、ほとんど場合、不利な扱いを受けることがないことは説明しました。
養子のおいしい立場。相続の機会が2倍に

「ほとんど場合」なんて頭につけざるを得なかったのは、今回のケースが頭にあったからです。

もっとも、養子が被代襲者ということは、すなわち亡くなっているので、養子本人のことではありません。

ですので、養子本人に限れば、相続では100%実子と同じ扱いと言い切っていいと言っていいと思います。

 

養子の代襲者になれるのは、養子縁組後に出生した子だけ

養親の相続において、養子縁組した時点で養子が子持ちであれば、その子どもは養子の代襲者にはなれません。

子どもを養子にした場合などは、こんなことを考える必要すらなく、ですから特別養子縁組では考える必要のないことです。

生みの親との親子関係がなくなる特別養子。相続におけるオマケもない

ですが、すでに子どもがいる人を養子にした場合は注意が必要だということです。

養親と養子は実子と変わらぬ親子関係となりますから、当然に、養親の親と養子は祖父母と孫の関係です。

でも、養子の元々の子は養親とは親族でもなんでもないわけです。

 

 

このケースの場合、代襲者として相続人になるのは親が養子になってから生まれた左のAだけです。

養子縁組前に出生していた右側のBに相続の権利はありません。

結論はこれはおしまい。
以下、その法的な裏付けです。

 

縁組前の子が代襲者になれないワケ

縁組前の子が代襲者になれないのは、代襲者の資格が被相続人の直系卑属以外には認められていないからです。(民法887条)

縁組前の養子の子は被相続人の直系卑属ではないというわけです。

でも、どうして?

根拠は、養子は養子縁組の日から親族関係を生ずるという規定です。(民法727条)
ここに、(もうすでにいる)養子の子は含まれていないというわけ。

ただ、これも分かり辛いです。
だって、明記されていないだけで、否定もされていないからです。

で、これを強化するときに出てくるのが、判例です。
ただ、かなり古くて、

大判昭和7年5月11日。

戦前・・
日本国憲法より前。

大判とは、大審院判決の 略で、大審院とは今でいう最高裁判所。

この判決で、縁組前の養子の子は、養子の親との血族関係がない(もちろん”法定”血族ではないと意味)と言い切られているわけです。

 

実はシンプルな理念を反映しただけ

直系卑属だとか、出生日が縁組の前だとか後だとか、分かり辛いルールのように感じるかもしれませんが、実はとてもシンプルな考え方から来ています。

それは、
養子縁組とは、あくまで養親と養子の一対一の契約だということです。

養子縁組は、養子のそれまでの人生は1ミリも引き受けません。
養親は、ある意味安心して養子縁組できるわけです。

後から隠し子が名乗り出る心配なんかしていたらこうはいきません。

そして、一旦養子と受け入れたならば、実子となんら変わらない。

養子の子の出生日と縁組日との前後によって代襲資格に差が生じるのは、養子縁組における、この理念をルール化したものに過ぎなかったわけです。

 

縁組の後に生まれた養子の子が代襲者になるケース

いずれにしても、代襲者の資格が出生日によって変わるのではなく、あくまで直系卑属か否かということです。

そう理解しておかないと、以下のようなケースもありますので。

 

 

この場合は、養子の子はいつ生まれたか?に関係なく、代襲者の資格を持ちます。
先ほどとの違いは、被相続人の実子と養子が婚姻関係にあることです。

つまり、Aはもちろん、Bも実子を通じて被相続人の直系卑属ですから、出生日に関係なく、代襲者の資格を持つわけです。

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