特別受益の持戻しは主張して初めて実現するものです。
そして、ほぼ必ず、持戻させたい相続人と、させたくない相続人がいて、対立します。
私的に解決できなければ、裁判所を頼ることになるわけですが、特別受益であるか否かだけを単独で訴えることはできないとされます。
【最高裁第三小法廷 平成7年3月7日】
では、どうするかと言うと、遺産分割調停を申し立てて、その中で特別受益を主張することになります。
遺産分割は、家事事件手続法の別表2に挙げられる事案の一つです。
別表2とはどういう意味かというと、当事者の話し合いによって解決するのが望ましいとされる事案です。
元々、家事事件は家庭内の紛争ですから、すべからくそうなのかもしれませんが、当事者の話し合いに馴染まないものもあって、それは別表1として区分けされているのです。
こういう意図から、別表2の事案は調停前主義といって、審判を申し立てても、裁判所の職権で、まずは調停が行われます。
あとは、調停で話し合いがつけばそれでOK。
調停が不成立となれば、そこで初めて審判手続きに移り、遺産分割の一部として特別受益の持戻しも判断されるというわけです。
その審判の決定に納得できなければ、遺産分割そのものについて裁判で決着をつけることになります。
審判の決定に、ある一部だけに不服を申し立てることはできません。
特別受益の持戻しだけが納得できなくて、その他の遺産分割方法になんら異議がない場合であって、形としては遺産分割の一切が未解決ということになります。
これは、特に、特別受益だけが特別扱いというわけではありません。
というか、それがスタンダードです。
家事事件手続法の別表2を見ると、遺産分割がらみで単独で調停や審判の申し立て出来るものとして挙げられているのは寄与分だけだからです。