寄与分の手続き。ダメ元でも調停が強制される乙類審判

寄与分も遺産分割と同様、自分たち共同相続人で話し合って決めることができます。

で、自分たちで話し合いがつかなければ、調停や審判を裁判所に申し立てることができます。(民法904条の2)

調停を経て審判に移行する寄与分

審判を申立てたとしても、寄与分は乙類審判(後述)に分類されるため、まずは調停に付される可能性があります。

調停が成立すればそれで良し。
あるいは不成立となってから審判に移行するわけです。

ここら辺は遺産分割協議と同様です。(民法907条の2)

 

乙類審判とは?

乙類審判とは乙類審判事件のことで、家事審判(家庭の関する事件を調停や審判で解決する仕組み)における二つの分類の一方です。
もう一方は甲類審判事件といいます。

元々は家事審判法第9条にある分類だったのですが、同法は家事事件手続法の施行(2013年1月1日施行)に伴い廃止されました。

廃止はされたのですが、甲と乙の分類は大半がそのまま、それぞれ新法の別表一と別表二に引き継がれています。
こういうわけで、今だに別表一を甲類と呼び、別表二を乙類と呼ぶわけです。

別表一(甲類)と別表二分(乙類)の分け方の基準は紛争当事者が特定できるか否かです。

別表二(乙類)審判事件は、紛争当事者の協議による解決が期待される事案で、調停の手続きによるのが原則とされます。

なので、審判の手続きに移行するには、調停の不成立が必要なわけです。
遺産分割、寄与分、養育費の請求などが該当します。

これとは反対に、別表一(甲類)審判事件の方は紛争当事者が特定しずらく、協議による解決に馴染まないので、直接審判手続きに進みます。
相続放棄や失踪宣告などが該当します。

 

寄与分の申立てと遺産分割の申立てとの関係

遺産分割の調停が継続していなくても、寄与分だけの調停の申立ては可能です。
でも実際は、遺産分割調停の中の争点の一つとして寄与分の主張が行われる場合が多いようです。

寄与分だけの調停の申し立てはできても、審判については、寄与分の申立てをするためには、遺産分割の申立てを行わないといけません。(民法904条の2)

寄与分の調停が不成立になれば審判手続きが開始されますが、このとき、遺産分割の申立てをしていないと、不適法として却下されてしまいます。

また、寄与分の申立てには相続人全員の戸籍謄本を始めとする遺産分割の申立てと同等の添付資料が必要ですが、遺産分割調停が係属中(取扱中)であれば、これら添付資料は不要で、申立書一枚で済みます。

遺産分割協議から寄与分だけを切り離して申し立てるメリット

寄与分は遺産分割協議の中で一緒に扱えばいいものを、わざわざ切り離す必要はないように思うかもしれませんね。

実際はそうするのスタンダードですが、たとえば、以下のようなケースで、寄与分だけを切り離すメリットを実感できます。

遺産分割協議調停で、ほとんど合意できていて、寄与分だけが合意できていなかったとします。

そうすると、寄与分だけのために調停は不成立となって、せっかく合意出来ていた部分も含めて遺産分割全体を審判に委ねないといけなくなってしまいます。

この場合、寄与分だけを審判に移して裁判所に決めてもらい、その結果を遺産分割調停に反映させれば、遺産分割調停を成立させることが出来るわけです。

 

寄与分の申立人と相手方

申立人は寄与分を主張する相続人、相手方はそれ以外の共同相続人全員です。

 

寄与分の申立先

遺産分割協議が係属中であれば、その裁判所。
そうでなければ相手方の中の1人の住所地を管轄する家庭裁判所、あるいは共同相続人の合意による家庭裁判所になります。

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